1/2

水汲み

¥2,000 税込

残り1点

送料が別途¥1,000かかります。

はだしの少女は
髪に紅い野薔薇を挿し
夕日の坂を降りて来る。
石だたみの上に
少女の足は白くやわらかい。
夕餉の水を汲みに
彼女は城外の流れまでゆくのだ。
しずかな光のきらめく水をすくって
彼女はしばらく地平線の入日に見入る。
果てしもない緑の海の彼方に
彼女の幸福が消えてゆくように思う。
おおきな赤い大陸の太陽は
今日も五月の美しさを彼女に教えた。
揚柳の小枝に野鳩が鳴いている。
日が落ちても彼女はもう悲しまない。
太陽は明日を約束してわかれたからだ。
少女はしっかりと足を踏んで
夕ぐれに忙しい城内の町へ
美しい水を湛えてかえってゆくのだ。

田辺利宏:『水汲み』
_
142×180 (mm)
画用紙

商品をアプリでお気に入り
  • 送料・配送方法について

  • お支払い方法について

¥2,000 税込

Checked
    Another